要 望 書

安倍晋三内閣総理大臣殿 御待史

特定非営利活動法人日本歯臓協会は下記について、6,066名の署名を添えて要望いたします。

一、 虫歯菌根絶のための研究開発とその対策に国の総力をあげて早急に取り組んでください。
二、 虫歯治療にアマルガムなどの水銀化合物の使用を早急に止めてください。
三、 従来の「歯を削って、被せて、抜く」と費用が支払われる「出来高払い」の歯科保険医療制度から、「健全な歯を残すほど」費用が支払われる未病・予防型の歯科保険医療制度に変えてください。


特定非営利活動法人日本歯臓協会
 特定非営利活動法人日本歯臓協会は、2003年6月7日に福岡サンパレスにおいてインターネットによる同時ライブ通信も活用し、虫歯根絶一万人集会を実現すると共に、それに先だって朝日新聞、読売新聞、琉球新聞による全国的規模での2000万部にわたる一面紙面(6月4日朝刊)での「歯は人体の中枢に影響する臓器であること、そして虫歯は伝染性感染症であり、そのための対策を国が取る必要性があること」を訴えました。
また、それを機に2004年8月にNPO法人としての認証を福岡県から頂戴するとともに、上記の要望を内閣総理大臣に行うための署名活動に取り組んで参りました。
その結果、26,333名の多くの賛同する国民の方々からの貴重なご署名を得ることができ、2006年6月に小泉純一郎内閣総理大臣へ、2008年6月に4,065名のご署名を福田康夫内閣総理大臣へ提出しました。しかし、残念ながらその要望が実現されたとは言えません。
 そこで当協会はその運動を継続し、改めて同要望に賛同する国民の方々からの貴重なご署名を頂き、国レベルでの虫歯菌根絶に総力をあげて早急に取り組んで頂けますことを申し添えて、ここに謹んで、要望書を提出させていただきます。よろしくご高配の程お願い申し上げます。

歯は人体の中枢に影響する臓器、虫歯は病気ではなく「障害」です
 歯が単に食べる道具、咀嚼器官の一部に過ぎないと言うのは、もはや過去の常識となりつつあります。「歯は臓器」と言われるほど、歯は全身や脳と直接、密接に関係しあっています。例えば、歯の噛み合せが良い意味でも悪い意味でも心身に重大な影響を与えていることが近年、歯科医学の発展とともに明らかにされてきました。また、虫歯や歯周炎に起因する顎口腔領域の慢性化膿性疾患が心筋梗塞や脳血栓症をはじめ、さまざまな全身疾患の隠れた原因であることも分かってきています。さらに、少子、超高齢社会の益々の進展の中で、健やかな子育てや、子宝に恵まれる健全な母体を育み、高齢者の最大の楽しみと言われる豊かで快適な食生活を確実にし、活力ある21世紀を創生するためにも、命や健康の入り口である歯の健康を増進することが急務です。
 そのような中、国民は虫歯を原因とする歯の喪失や噛み合せの狂いそして痛み、咀嚼不全など、依然「虫歯」に苦しみ続けています。昨今、虫歯を治療する歯科医院はコンビニエンスストアーよりも多いと言われるほど、健康な歯が病み虫歯になってしまったものを治療する体制は過剰なほどに整ったにも関わらず、国民の健康な歯が予防され、虫歯にならないように歯の健康増進を進める国の歯科保健予防体制、あるいは民間の歯科医療機関と国との連携ができているとは言えません。 

 本来、人体のいかなる臓器、器官といえど、国民の大多数の人々が、それを除去(抜歯)したり、人工物質と置き換えること(義歯)が当たり前になっていることは異常と言わなくてはなりません。虫歯は病気ではなく、決して本来の健全な状態には戻らない「障害」です。そのような障害の発生は、当然のことながら、それは障害であるが故に起こしてから処置するのではなく、未然に障害を起こさないように必要な対策をとることが求められます。なぜなら、一旦、障害を起こすと人工物質で置きかえることはできても、健全な本来の状態に復することは出来ないのです。
 今日、歯科医学はインプラント治療、再生医療など長足の進歩を遂げつつあるやに見られますが、それは宇宙の大生命の法則からは本来のあるべき医学進歩の方向ではないように思われます。神様からおかりしているとも言える私たちの生命体は、決して人間の小智才覚で人工物質と安易に置き換えられるようなものではないのです。それ故、必ず改善の処置とは裏腹にそれに伴う副作用が発生する危険性が内在します。国民は、長年にわたって、人工物質で歯の障害を処置すると言う歯科治療によって、副作用や歯科医原病ともいえる口腔内のそして全身の異常で、一見そうとは分からない原因不明の形で苦しみ続けています。

虫歯は伝染性感染症 
近年の歯科医学の発展によって、虫歯が「ストレプトコッカス、ミュータンス。ストレプトコッカス、ソルビナス」を病原菌とする伝染性の感染症であることが医学的に明確に解明されています。にもかかわらず、国は的確な虫歯予防のための感染症対策をとらないのは、国民の健康の保持増進に責任を有する国の責務に鑑み、誠が尽くされているとは言えないのではないでしょうか。
 なぜなら、虫歯は歯磨きや食生活に起因する生活習慣病であるという、従来の理解が正しいならば、国民の健康保持の基本である「自分の健康は自分で守る」という国の進める指針にあるように、国民は自らの生活習慣を律し、できるだけ虫歯にならないように、あるいは子供の歯をできるだけ虫歯にしないように母親は努力しなければなりません。そして、もし自分や子供が虫歯に罹患しても、それは誤った生活習慣に起因するものであり、自らの責任とされなければなりません。

伝染性感染症の虫歯は個人の予防に限界がある
しかし、虫歯がその病原菌も明確にされた伝染性感染症であり、従来直接の原因とされてきた歯磨きや食生活などは、その感染症を増悪化する背景因子であることが明確になった今日、「国民の自分の健康は自分で守る」という自助力にも限界があります。なぜなら、それは伝染性の感染症であるが故に、どんなに、感染を悪化させない背景因子を自らの努力でコントロールしても、口は本来「食べる」ところであり、一旦、他からの虫歯菌の感染を起こせば、そこには虫歯が発症するのです。そして、口の中で歯から歯に虫歯菌の感染が広がり、遂には人生の中で歯はボロボロになり、抜かれ、入れ歯を装着せざるを得なくなるのです。

伝染性感染症の脅威
 今、韓国では、伝染性感染症の「MERS」が大問題になっています。日本でもかって「O-157」の伝染性感染症が猛威を奮いましたが、国はその予防対策に奔走し、無事その感染症の蔓延を防ぎ国民の健康を守ることができました。最近では鳥インフルエンザが話題になりました。そのとき、国は感染菌の直接的な駆除と伝染経路の遮断という、伝染性感染症の原因菌に対する直接的な対策によってその蔓延を防ぎました。しかし、もし国が、これまでの虫歯対策のように、国民に『「O-157」の感染症に罹患しないように、背景因子である生活習慣の改善、すなわち正しい食生活と休養、睡眠を十分とり、たとえ「O-157」の感染を受けても発症しないように、体力をつけて予防して下さい』というようなことを対策として行なっていたら、感染症は蔓延し、遂にはとりかえしのつかないことになっていたでしょう。国は滅びてしまうかもしれません。かって医学の未発達の頃、伝染性感染症は一つの地域を、町を、国を、そして文明を滅ぼすだけの力を持っていることは歴史が示しています。

虫歯は緩慢な死と生命力の低下をもたらす
 虫歯菌は「鳥シンフルエンザ」、「O-157」や「ペスト」などとは、その毒性や致死性において全く異なりますが、それが急速な死をもたらすのか、緩慢な死、そして生命力の低下に結びつくかの差はあれ、本質的には同種の伝染性感染症であることに変りはありません。否、むしろ少子、高齢社会が、益々進展することが予想される今日、緩慢な死、緩慢な生命力の低下に繋がる伝染性感染症「虫歯」は、国民の疾病の増大、健康の低下、それに伴う国民の活力の低下や更なる少子化の加速、そして医療費や老人医療費など、健康福祉費用の膨張をもたらし、遂にはたちゆかなくなるかもしれません。
 歯は中枢の臓器として、命の秩序と調和を決定づけていることが、新たな医学研究で明らかになっています。そのため、健全な歯を国民に残すことがその健康寿命を延ばすのに極めて意義があると思われます。
 今日の経済発展や国民生活、食生活、公衆衛生の驚異的な向上そして医学の高度の発展健康補助食品の普及にも関わらず、一億総健康不安、かって成人病と言われていた生活習慣病の増大、自殺者の増大、少子化の加速、アトピー患者の増大、そして少年の異常行動や凶悪犯罪の増大などなど、これまで伝染性感染症であるにもかかわらず、誤った生活習慣病の認識の中で適切かつ有効な対策が取られて来なかった、たかが虫歯と侮ってきた、その「虫歯」による、日本の緩慢な死、日本の緩慢な生命力の低下の現れであると、私たちは危惧しています。それ故、このような活動を行なっているのです。
 
水銀アマルガム歯科材料の即時中止の必要性
 また、その虫歯の治療のために、水銀を50%含むアマルガム歯科材料を長年、そして今日も国はその使用を許可していますが、有機水銀は水俣病やイタイイタイ病でもその人体への猛毒性は明らかになっています。スウエーデンでは、1994年にこのアマルガムの使用が人体に有害有毒であるとして法律的に禁止されています。そのような「歯は臓器」として見た時にも、決して臓器適合性があるとは決して考えられない安全性に疑問のあるアマルガム歯科材料も即時にその使用許可を止めるべきです。このような安全性に疑問のある物質を長年使用し続けてきたことも、日本のそして国民の緩慢な生命力の低下そして疾病の増大や少子化に繋がっているのではないでしょうか。

評価できる国の研究、その発展を期待します
 以前所属していた国立感染予防研究所における研究を引き継ぎ国立保健医療科学院口腔保健部が中心となって開発した「3DS(Dental Drug Delivery System)は虫歯菌に直接アプローチし、虫歯予防を推進する方法として非常に評価できる研究と考えられます。今後、本研究をさらに推進するとともに、国や保健所、歯科医療機関と連携し、虫歯を「治す」医療から、虫歯に「ならない」、ひいては社会から虫歯菌を駆除し、大生命の法則にのった本来の歯科医学に回帰することを期待します。 

 そのような評価できる虫歯予防の発展が見られる反面、近年、国立大学の独立法人化の中で、その収益性の悪さから、大学の付属病院から予防歯科部門が閉鎖される傾向にあり、虫歯予防の研究スタッフが減少しつつあります。また、国の感染研究の中心である国立感染予防研究所に所属していた感染症としての虫歯研究の最前線である口腔科学部のう蝕室・歯周病室が2002年に閉鎖され、国立保健医療科学院に移されました。これらの昨今の虫歯研究とその予防、根絶に向けた姿勢は、本当に私たち国民の税金を適切かつ有効に活用し、国民の真の健康達成に寄与しようとしているか、危惧されます。

 国家百年の大計と申しますが、少子高齢化が加速する昨今、明るく健康で活力ある百年後の日本の未来像を描くとき、命の入り口であり食の入り口を崩壊させ、障害を発生する「虫歯」の伝染性感染症としての本質的な脅威に気づき、的確な対策を国が総力を挙げて取り組まれることを切に要望するものです。また、そのことは、近隣アジア諸国はもちろん他国における同様の問題に対しても、警鐘を鳴らすとともに、他の諸国民の健康福祉の向上に繋がり、ひいては世界平和達成への一助となるものと確信いたします。
 NPO法人日本歯臓協会は、その前身の活動を含め、これまで虫歯菌や歯周病菌を直接生きたまま観察できる位相差顕微鏡テレビモニターシステムを計27台、23年前から毎年、九州の小中学校や市町村に寄贈させて頂きました。昨年は鹿児島県沖永良部高等学校へ寄贈させて頂きました。

予防型の歯科保険医療制度へ転換の必要性
 現在歯科保険医療制度は、歯科治療費用に対して、出来高払い型で診療機関に費用が支払われていますが、歯科医療機関、保健所、親が連携して、子供の虫歯を予防し、健全な歯を国民に残すことに対して、国から費用が支払われる予防型の歯科保険医療制度に転換することを提案したいと思います。

 私達は、「歯は中枢の臓器」と言えるほど、歯が命の根源につながり、心身の健康に重大な影響を及ぼしていることに気づいた者として、使命として今後も虫歯が伝染性の感染症であることをふまえた虫歯菌根絶に向けた取り組みが適切になされるよう注意しつつ国民のためすべての歯があるのが当たり前の社会の達成にむけて活動していきたいと思います。
 ありがとうございます。

  平成27年6月25日
                      特定非営利活動法人日本歯臓協会
                          理事長 村津 和正
                      福岡県福岡市博多区博多駅前2-5-9-8F
                        (TEL092−476−0834)